STORY

00. 出発

ぼくは、あわてて汽車に飛び乗った。

良かった、次の”景色”には間に合いそうだ。

01. 本の町

ここの住人はみんな読書好き。

お金なんて使わない。

欲しいものがあれば、手に持っている本を渡すのさ。

02. 絵の町

この青い空も家も人も電灯も、全部絵で出来ているなんて驚きだ。

たった一人の絵描きによって作られたらしい。

「旅人さん、ちょっと待って。今から夕方に描きかえるから」

「どれくらいかかるんだい?」

「そうだなぁ、ひと月あればじゅうぶんだよ」

「そうか、また来月に来るよ」

03. 悲しみの町

世界中の悲しみがこの町に届く。

住人たちは悲しみを糧に花を咲かしたり木を育てたりする。

そして生まれた喜びを収穫して世界に送り届けるのだ。


04. RPGの町

ここの住人はぼくが話しかけるとそれぞれ同じ言葉を繰り返す。

「ようこそ、はじまりの町へ」

「ここで装備していくかい?」

「王様が君を捜していたよ。早くお城に行った方が良い」

「西の森は気を付けて。魔物が出るからね」


05. 猫の町

この町に入ると、ぼくは猫になっていた。

「にゃー」

陽だまりが心地よい。少し昼寝していこうか。


06. 英雄の町

町の真ん中にたくさんの銅像が並んで輝いている。

「いや~困った困った。旅人さん、少し手伝ってはくれませんか?」

「ええ、良いですよ」

「何て素晴らしいんだ!あなたは英雄だ!」

「英雄?」

「ああ!さっそく旅人さんの銅像を作らなければ!」


07. 劇場の町

おかしい、夜でもないのに真っ暗だ。

ぼくが町へ踏み入れると、どこからともなく眩しいスポットがぼくを目掛けて射し込んだ。

すると、待ち構えていたかのようにオーケストラの指揮者がタクトを振り上げる。

「ようこそ、旅人さん!さあ、一緒に歌って踊りましょう!」


08. 終点 ぼくの町

ちっぽけでつまんない、でも大好きなぼくの町。


「ぼくの町」

作詞/作曲 corico
歌 Nina Branch


夕暮れ ひとりぼっち

黄色い 花が香る

あしもと 伸びる影

もうじき 夜へ帰る

ああ いたずらな

風と背中を合わせ

見上げる空の色

”おもいで”のページを数えながら


ぼくの町は ちっぽけだけど

きみの歌が すぐ届くよ

ぼくの町は ちっぽけだけど

手を伸ばせば きみがいるよ


何気ない ひとことで

動けないときもある

ころんだキズかばい

涙をこらえながら


ああ 気が付けば

たくさん抱えすぎて

溢れ出す”おもいで”と

そろそろお別れしてもいいかな?


ぼくの町は ちっぽけだけど

お茶くらいは出せるから

ぼくの町は ちっぽけだけど

どうぞここでひとやすみ


ぼくの町は ちっぽけだけど

きみの歌が すぐ届くよ

ぼくの町は ちっぽけだけど

帰る場所は ここにある

帰る場所は ここにある